077004 ランダム
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Lee-Byung-hun addicted

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Seat warming story 《4》

Seat warming story 《4》



「ねぇ・・帰った方がいいんじゃない?」諭すように揺が言った。
「いやだ。泊まってく。」駄々っ子のように答える彼。
「泊まってくって言ったって・・こんな部屋よ。狭くて疲れが取れないでしょ。明日も早いんだし。」
二人は揺が夕方にキャンセル待ちで予約したロイヤルホテルの一室にいた。
彼女がとっていたのはシングルルーム。
出張でソウルに来るビジネスマンが利用しそうな飾り気がなく休むためのベッドがひとつ部屋の片隅に置かれている部屋。
片隅といっても部屋のほとんどはそのベッドに占領されていた。
「本当に大丈夫?一緒にいられるのは嬉しいけど・・何だか無理させちゃったね」
「一晩くらい眠らなくたってなんともないって言っただろ。ほら、そんな心配しなくていいから。全くこんな冷たい手して。揺・・・一緒にお風呂入ろうよ。」
困った顔をする揺に向かって彼はそういってにっこりと笑いかけた。

「何だか最高に幸せな気分だ・・・・」
彼は狭い湯船を泡でいっぱいにして腕の中に揺を抱えてそうつぶやいた。
「こんな狭いのに?」と揺。
「狭い方がほらこうやってくっつけるだろ?」
悪戯っぽく彼はそう言うと泡の中で揺をしっかりと抱きしめる。
「確かに・・最高に幸せだわ。『あなたさえいてくれれば私もう何も要らない』ってセリフはこういうときに使うべきね」
「クックックッ」笑う彼。
「何笑ってるの?」
「いや。相変わらずだなって思って」
「何が?」
「素直じゃないって言おうか・・変わってるって言おうか。『あなたさえいてくれれば私もう何も要らない』ってたまには素直に言ってみたら。この口で。」
ビョンホンはそういうと肩越しに揺に熱いキスをした。
「何だかちょっと前に聞いた気がする言い回し。危ない危ない。もうその手には乗らないわ。この間痛い目に遭ったからね。自分を見失うと後始末が大変で。」
揺はそういうと湯船に溢れた泡をビョンホンの鼻の頭に丸めて乗せた。
「つまんないな・・見失っておろおろする君はすっごいチャーミングなのに。それに君が自分を見失ったおかげで俺はプロポーズしてもらえたのに・・痛い目なんて人聞きが悪い。」
ちょっとふてくされたように彼が言った。
「まあまあそう言わずに。」
揺はそういって振り向くと彼の鼻の頭の泡をひと吹きし彼の唇にゆっくりと優しいキスをした。
「自己防衛本能よ。あなたにかかると自分が自分でいられなくなるんだもの・・」
そういうと揺はまた彼にキスをする。今度は熱く深い情熱に溢れる大人のキス。
「揺・・・俺はなんて面倒な女に惚れちゃったんだろう。『君さえいてくれればもう何も要らない』」
ふざけたように彼はそう言って揺を抱きしめた。
「嘘つき。明日になればお腹がすいたって吠えて舞台挨拶に行って感じちゃうくせに」
揺は泡の中で彼に愛されながら笑った。


揺は彼と愛し合う時いつも思う。
彼の愛は彼そのものだと。
時に繊細で時に大胆で。いつも相手のことを思い、尽くし、それでいて自分も奔放に楽しむ・・・。
この日の夜の彼はいつも以上に大胆で力強かった。自信が体中から漲っている感じがした。
それがどうしてなのか・・・彼女には良くわかっていた。
そう。この日彼にはもう火がついていたのだろう。
映画館で見た彼の顔を思い出す。
まるで二人で求め合った後のように高揚している顔。
揺は映画に彼を寝取られた気がしていた。
彼の腕の中でいつもより激しく彼に求められながら彼をもっと満たしてあげたいと揺は思った。

彼は満足したのだろうか・・。心配になって彼の顔を覗きこむ。
愛し合った後、揺の額に軽くキスをした彼は狭いベッドの上で仰向けに横たわり目を瞑っている。
心臓の鼓動が彼にかかっているシーツを静かに揺らしていた。
「揺・・・何?」
目を閉じながらも自分の顔を覗き込む揺に気づいた彼が問いかける。
「ん?ううん。なんでもない」取り繕うように答える彼女。
「ダメ。ちゃんと答えて。」彼は揺の腕を掴み彼女の目をじっと見つめた。
「まいったなぁ・・・。言わなきゃだめ?」
「うん」
「どうしても?」
「うん。どうしても」
「・・・・あのね・・・映画に勝ったかなって心配になったの。」
恥ずかしそうに答える彼女。
「ん?」
「だからね。あなたが今日映画館から出てきた時あんまりいい顔してたから悔しかったのよ。映画に感じちゃったんだって思ったら負けたくなくて・・・」
「クックックッ・・」彼が笑う。
「何?」
「それで頑張っちゃったんだ・・」
「えっ?」
「いや、いつもより激しかったからさ。」
「あなただって・・いつもよりずっと激しかったじゃない」
「そうかな」
「そうよ」
変な言い合いをしていることが可笑しくて二人は大声で笑いあった。
そしてまた愛し合う。
彼女の耳元で彼がささやいた。
「君は最高だよ」と。
そして熱く深いキスをする・・・・。
彼に抱かれながら揺は思っていた。
彼を映画とシェアするのも意外に刺激的で悪くないかもしれない・・と。


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